弁護士 工藤 大基
仮の地位を定める仮処分
民事紛争の最終的な解決手段は,裁判所に裁判を提起して,勝訴判決を獲得し,判決に基づいて権利の実現を図る,というものです。
しかし,裁判手続は,任意の話合いに比べると,どうしても解決までに時間がかかります。そのため,紛争に巻き込まれた方の中には,裁判が終わるのを待っていられないと考え,裁判手続を断念し,不本意ながら相手方に大幅に譲歩したり,そもそも相手方と争うこと自体を避けて泣き寝入りしたりする方もおられます。権利を侵害されているのに,裁判に時間がかかるとの理由から,さらに理不尽な対応を迫られるとなれば,司法そのものに対する信頼も失われかねません。
そこで,法は,このような不合理な事態を解消するため,勝訴の見込みがあり,一定の緊急性が認められる事案においては,裁判手続が終わるまでの間,裁判所が暫定的な権利関係を設定して,仮の権利の実現を図る「仮の地位を定める仮処分」という手続(保全手続の一種)を設けています。
裁判手続に比べると,一般にはあまりなじみのない手続と思われますので,今回は,この「仮の地位を定める仮処分」という手続について,実際の相談例をもとに,どのような形で審理が進むのか,どういった事例で活用できるのか,などについてご説明したいと思います。 “仮の地位を定める仮処分について” の続きを読む